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静臨+新/腐男子シリーズ










机の上に投げ出した数本のシャーペン、消しゴム、原稿用紙。
真っ白な原稿用紙を見ていて思わずため息が出た。原稿用紙なんて反省文書いた思い出しかねぇよ。


「…なぁ新羅、どう書けばいいんだ」
「妄想をそのまま書きなぐればいいと思うよ」


妄想なんてしたことねぇんだよ馬鹿。

俺がなぜ原稿用紙を前にしているかといえば、臨也が原因だ。
臨也がいきなり「シズちゃんにBL小説書いてほしい!」と言い出して断る暇もなくいろいろ準備されたんだ。邪悪さの欠片もない笑顔をされたら書かないだなんて言えなくなった。

そういうことで作文もろくに書けない俺が小説、しかもBLを書くという恐ろしい展開になっている。無理に決まってんだろ常識的に考えて。
困った俺は臨也と同じく腐男子である新羅なら何かアドバイスをくれるだろう、ということで今新羅の家にいた。


「あー…全然わかんねぇ…」
「気楽に書いたらどうだい?臨也だってそれほど高度の高いものを望んでるわけじゃないだろうし。静雄の妄想が見たいだけだと思うよ」
「だから妄想なんてしてねぇっての」
「嘘だ!ホモが嫌いな男の子なんていません!」

「何キャラだ手前」


ピンッと軽く額を弾いてやると大げさなくらい新羅の首が反り返った。わざとか、なんなんだ。
新羅は少し涙目になりながらも首を定位置に戻す。


「この際絵本を書く感じでいってみたら?絵本のパロとかなら書きやすいんじゃないかな。お姫様を男にするだけでBLだ!」
「そういうもんか?」


それなら俺にも書けるかもしれない、と俺はシャーペンをとる。お世辞にも綺麗とは言い難い字で原稿用紙に文字を埋めていく。

『むかしむかしおじいさんとおじいさ』


「スト――――ップ!!」
「あ?」


新羅は突然叫んだかと思うと原稿用紙を引ったくっていった。その顔には焦りが浮かんでいる。


「絵本を書く感じでとは言ったけどなんでおじいさんとおじいさん!?さすがにその発想はなかったよ!臨也が静雄は予想がつかないって言ってた理由がわかったよ!」
「だって桃太郎に姫はでないだろ」
「なぜ桃太郎チョイス!?それなら普通に桃太郎と鬼を絡ませればいいから!」
「わかった」


おじいさんとおじいさんは却下されたため、新羅のいう通り桃太郎と鬼でいくことにした。

最初から書いていたら時間も原稿用紙も足りないため、桃太郎と鬼が絡んでるところだけ書くことにした。


『「もも太ろう!今日こそは手かげんしねぇからな!」
「のぞむところだよ、おに!君には絶対負けない!」
もも太ろうはナイフをかまえておににつきさそうとします。けれどおには持っていたひょうしきでそのナイフをなぎはらっ』


「静雄、なんで桃太郎がナイフを持ってるのかな。なんで鬼が標識を持ってるのかな」
「………うわ、マジかよ」
「無意識!?」


ただ普通に書いていたはずなのに気付けば桃太郎も鬼も原作とは全く違う凶器を持っていた。なぜだ。しかもこの口調とか、これ…


「俺とシズちゃんみたいだねぇ」
「おろっ!?」
「なぁに?緋村剣心のつもりなのシズちゃん」


後ろからひょいっと顔を出してきたのはここにいるはずのない臨也だった。しかも俺の書きかけの小説紛いのものを凝視している。
ヤバい恥ずかしい。あと緋村剣心って誰だよ。


「臨也、いつどこから入ってきたの?」
「玄関から。インターホン鳴らしたけど出ないし、鍵あいてたから勝手に入っちゃった」


何も悪びれた様子のない臨也は俺の原稿用紙を掴むとひらひらと指先で弄る。消しカスがぼろぼろ落ちていった。


「俺が桃太郎ってことはシズちゃんをやっつけちゃうんだ。楽しみだなぁ楽しみだなぁ」
「誰がやらせるかよ。俺が勝ってお前を嫁にしてハッピーエンドだろ」
「ふぅん、じゃあ続き書いてよ。できるまで俺寝てるから。新羅寝室貸してねー」
「いいよー」


臨也が手を振りながら出ていき、俺はもう一度シャーペンをとった。なんだか書く気力がわいてきた。
新羅はそんな俺を見て楽しそうに笑った。


「静雄、さっきの会話思いっきり鬼と桃太郎のことなんて忘れてるだろ」
「は?」
「臨也への本心とかそのまま書いちゃいなよ。頑張ってね鬼さん?」
「…おうっ」


その後、出来上がった小説を読んで臨也は顔を真っ赤にしながら抱きついてきた。










桜さまに捧げます。





 


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