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[※♀暗渠の底よりお慕い申し上げますC]





――――どうしてあの時ドアは壊れていなかったのだろう?
そんな少しの疑問もすぐに掻き消されてしまった。尖らせた舌が膣に侵入する。少しの圧迫感と、痒いような感覚に身を悶えさせた。舌で何度か入り口付近を擦り、緩んだタイミングを見計らって宣告なしに指を入れた。
「ふっ…あ、ぁっ」
臨也が息をつめる。苦しいだけでなかったのが尚更臨也を混乱させた。入り口付近を広げるように指を回す。根気強く指で慣らして、少し余裕が出来たところで二本目を割りいれた。臨也から時々苦しそうな喘ぎ声が上がったが、静雄は何も言わなかった。
「あ、んぅ…っ」
膣内に埋めていた指を二本同時に引き抜いた。引き止めるように膣内の壁が蠢いていた。久しぶりに外気に晒された二本の指を鋏のように開くと、間に粘液が数本糸を引いていた。静雄は手早く着ていたシャツを脱ぎ、放っていたベストのポケットに指を入れる。そこから取り出したのはコンドームだった。犬歯でそれの袋を食いちぎるように開くと、チャックの隙間から出ているそそり立った性器にくるくると被せた。その様子を見て臨也は一瞬、慣れているの、と聞きたくなったが意味のない事だと思い直した。

薄い膜越しに性器が触れ合う。静雄は臨也の顔を覗き込んだ。泣き出しそうな目をしていた。
「あ、…うっ、ぐ…!」
途中でつっかえる度に臨也から苦しげな声が漏れる。それでも腰を進めていくと、一際強くつっかえて半ば無理に腰を進めるとブチ、と嫌な音がした。
「―――――! ぎ、ぁああっ!」
声にならない悲鳴の後に、喉から絞ったような濁声。少し伸びすぎた爪が静雄の肩から腕にかけてを引っ掻いた。引っ掻くというより抉るといったほうが正しいのかもしれないほどその力は強かったが。今はそれ以上腰を進めるのは無理だと判断して、静雄が腰を止めた。静雄の腕に爪を立てたまま、臨也は胸を大きく上下させる。悲鳴のような引き攣った声が出なくなって、少し静かになったあと漏れたのは泣き声だった。
「…う、っ…」
静かに押し殺すような声だった。今でも酷く痛むけれど、その涙は破瓜の痛みによるものではなかった。何か、取り返しのつかないことをしてしまったような。後悔先に立たずと知っているはずなのにどうして今更、白い影が浮かぶのだろう。
顔を覆って泣き出した臨也を静雄は静かに見つめて、腰を進めた。
苦しげな泣き声が聞こえているのかどうかは定かではなかった。根元まで沈めたそれを引き抜いて挿し入れる、を繰り返す。粘液を纏っていない箇所にゴムの触れる感覚が不愉快だった。
「ぃ…ああっ、は…!」
臨也は自分の途切れる喘ぎ声を脳の中のどこか遠くで聞きながらゴム越しに何かが弾けるのを感じた。

****************

静雄は黒い髪を払って臨也の顔を現させた。目の端に残る涙の筋が痛々しかった。静雄は近くにあったゴミ箱に口を縛った精液入りのゴムを捨てた。ついでに中に入っていたビニール袋を手に取る。中に手を入れるとレシートが入っていた。静雄は乱雑にそれを掴むと放ってあったベストに手を伸ばす。先程と同じようにポケットに手を入れると、静雄の手からレシートの代わりに鈍く光る銀色のものが出てきた。
「帰るときは使わなくていいな」
そう言って銀色のもの――――ここの鍵を再びしまうと、臨也を少し眺めた。新羅に会う口実が欲しくて、わざと水分を取らずにコートを羽織っていたのではないかと疑ってしまう。殺し合いの最中に出来た傷を土産に、その直後に新羅宅へ直行していた事も知ってる。別に嫉妬していたわけでもない。
臨也はもう何ヶ月かあとに新羅の家に行くだろう。口実を作ったのはまたも静雄だ。
静雄は視線を臨也からゴミ箱に移した。黒い底に白い液体がじわりと滲み出ている。








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